鐘秀館
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近江商人と長浜商人
役員・沿革
  近江商人と長浜商人  
17.月末の支払いと遊び人
一口に近江商人といっても下郷のそれは創業者としては型破りともいうべきエピソードを多く残している。彼は商用であれ、遊びであれ、必ず巾着(財布)持ちを連れたが、その会計報告の仕方が面白い。商用の場合は旅費報告でも綿密に記入させるが、遊びの旅行などは大雑把で、山城温泉で宴会、○○円払いでOKだった。もし丁寧に酒が何本、料理が何ほど、仲居や芸奴の祝儀が幾ばくなどと書けばたちまちお目玉だという。「そんな細かい報告は無益だ。合計だけでよい」と戒めたという。これらの話は、下郷の三女・たかの夫・横田立次郎(長浜の元町長)の身近な体験談である。下郷はこんな話も家人にしている。
「月末の支払いで、子供と女が勘定を取りに来た時は、きれいな札で支払え、またつり銭のいらぬようきちんと払いなさい。子供と女は汚い札や破れ札でも遠虜して換えてほしいといわない。大きな紙幣で渡すと計算を間違え余計につり銭を出して損をすることがあるやもしれぬ。それが可哀想だ。また2度と足を運ばすようなことをしてはいけない」。

「世間では月末の支払いに困る場合、家賃と米屋や燃料屋の払いを後回しにするものがいるが、家賃や米屋、燃料屋は第一に支払わねばならぬ。家賃を米代など支払えぬ者が、飲み屋や料理屋などへ行くのはもってのほかだ。また、飲み屋や料理屋の勘定は値切るものではない。お茶屋や料理屋遊びは自分が馬鹿になってこそ面白いわけで、馬鹿が利口の真似をするのは大間違いだ」

私生活については、京都の邸で8年間奉公した大野はるの話が面白い。
「ご主人は三度、三度暖かいご飯を炊かせて、熱いのをフウフウ吹きながら食べられた。刺身は大きく切ったのでなけばお気に入りません。なんせ性急(せっかち)な方ですから刺身などにしても先ず一人前を食べ終え、もう一つ欲しいと申された場合など新規に注文していては、間に合いませんので、前から2人前を注文しておいてこんなときにまごつかぬようにしました。ぐずぐずすることが大嫌いの性急な方でよく叱られましたが、反面、親切で思いやりのある方なので辛抱出来ました。書画骨董が大好きで道具屋が始終出入りしていました。毎晩12時ごろまで道具いじりで一々蔵から出してご覧になられ、これを出し入れするのが、私の役でした」
(久道翁伝参照)
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18.下郷の死と二代目傳平
二代下郷傳平久成翁二代下郷傳平久成翁 下郷傳平は明治31年(1898年)5月19日、京都の別荘で病没した。56歳だった。死の数日前、長男・寅吉(二代目・傳平)を枕もとに呼び、死後における下郷家の経営方針を教えた後、社会奉仕の寄付などについて次ぎのように後事を託した。

「死後、受け取るべき保険が2000円ほどあるが、うち1000円を貧しい人の福祉に、残りの1000円は葬儀費用にあてよ。資産の一部を割いて社会福祉その他公益事業に寄付すること」この他、下郷は生前に遣り残したことが2つあると残念がり、息子の寅吉らに「父に代わって実現するよう」話していたことがある。一つは博物館、今一つは図書館の建設であった。これらは二代目・傳平によって、下郷共済会の設立や美術品、歴史資料の展示場である鍾秀館の建設となった。また、彼の死後、その遺志によって東本願寺本山へ教学資金として600円が寄贈された。

葬儀は5月26日大谷派別院大通寺で行われ、真行寺住職・藤田円照を導師に町内各寺院や親戚寺院の願養寺、観念寺その他多くの僧の回向が行われた。県内外から政界、経済界、法人団体など数百人の会葬者で豪商にふさわしい盛儀といわれた。日赤本社社長からの弔辞をはじめ、九鬼隆一男爵、近江尚商会の波多野重太郎、同長浜支部代表仲居篤次郎、大阪電灯社長ほか数人の弔辞があり、鷹司公爵など華族32家を含め多くの弔電が寄せられた。県内からの会葬者には近江商人として財界で活躍している人や政界有名人もあった。その主なのをあげると、伊藤忠兵衛、馬場新三、堤惣平、小泉新助、山中利右衛門、富田八郎、柴田源七、大濱太郎兵衛、外村宇平衛、小林吟右衛門、西川太治郎、波多野重太郎、薮田勘祐。

下郷の死後、その長男・久成(幼名寅吉)が二代目傳平としてこれを継いだ。二代目は明治5年生まれ、京都の三高から慶大に進んだ秀才で、25歳で近江製糸の社長になった他、20以上の会社を設立し、頭取、社長、重役など75のポストをこなした。
長浜町長のほか貴族院議員にも当選し、各地の社会、福祉、文化事業などに貢献し、それらの団体役員にも推された。
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